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〜時代の期待に負けた?希有な才能〜 (Donny Hathaway/Live)
このコーナーでは、新譜、旧譜問わず、もちろんジャンルも問わず、これぞ名作という、1枚を紹介していきたいと思います。また、皆さんのこれぞ名作というご意見もどうぞ。
音楽にもいろいろなジャンルがありますが、最初に取り上げてみたいのは、SOULです。60年代に全盛期を迎えたSOULは、70年代半ばで一部を除いて無くなったと言われます。しかし、自分にとっては、いちばん精神的に解放される音楽なので、その開放感を他の人たちと楽しみたいものなのですが...。
そこで、初回に紹介する一枚は、SOULの中でいちばん好きなアーチストかもしれない、Donny Hathawayの「Live」というアルバムをご紹介します。
Donny Hathawayがデビューしたのは、70年代初頭。時は、新しいタイプの黒人ミュージシャンを要求していた時代で、例えば、Sly Stoneの「暴動」、Curtis Mayfieldの「スーパーフライ」など、名作ばかり発表された時代です。また、白人音楽であるロックに遅れましたが(黒人の購買能力の低さによるところが大きかったのですが)、ブラック・ミュージックもシングルから本格的にアルバムの時代へ移行し、Stevie WonderやMarvin Gayeがすばらしいアルバムを連発していたのもこの頃です。
Donny Hathawayは、それまでにないタイプのミュージシャンでした。1945年シカゴ生まれ。ワシントンDCの名門であるハワード大学でクラシックを勉強していて(同窓生にはRoberta Flackがいました)、そのために、作曲の仕方がそれまでのSOULとは違い、ジャズやクラシックの影響が強く、ジャンルにはまりにくいところもあります。ただ、歌自体はとてもソウルフルです。
さて、Donnyにとって、3枚目に当たる「Live」。71年の8月にロサンゼルスのトルバドールと、同年の10月にニューヨークのビターエンドで録音されたもので、選曲は、自分のオリジナルだけでなく、Marvin Gayeの「ホワッツ・ゴーイン・オン」やJohn Lennonの「ジェラス・ガイ」など、親しみやすい選曲となっています。
このレコーディングの当日、彼のプロデューサーのArif Mardinが、会場へ行くと、会場を待つファンが、都会的で洗練された黒人ばかりだったことにびっくりしたと語っています。それまでのR&Bとも、SOULとも違う新しい音楽の登場と、それを支持する存在を感じたようでした。バックのPhil UpchurchやCornell Dupreeなど腕利きぞろいの演奏ももちろんですが、何よりこのアルバムはDonnyの歌、演奏以上に観客の歓声がすごい!LIVEって、演奏者と観客との一体感が何より必要だなあと再認識させられます。特に、「You've Got A Friend」の大合唱といったら!まあ、こればっかりは実際聞かないと分かりませんね。ぜひ、レコード店へ走ってください。低価格で出ているはずです。
70年代のブラック・ミュージックをリードしていくはずだった彼も、この次に出した、「Extension Of A Man」(これも大傑作)を出して以降は、活動を休止してしまいました。ノイローゼで病院に入っていたらしいのです。時代をリードするはずだという周りの期待に、負けてしまったのでしょうか?一般的に、才人は精神的にもろいところがありますが、彼もその例外でなかったようです。78年に、Roberta Flackのアルバムでデュエットで参加して復活(やはり、持つべきものは友達?)したのですが、翌年には、ニューヨークのホテルから飛び降り自殺してしまいました。享年、わずか33歳でした。
彼の歌には、ラヴソングを歌っていても、人類愛や、神への愛というもっと広がりのある世界を感じさせるところがあります。その当時、Black is beautiful.という言葉がありましたが、まさにその通りに、黒人であることを攻撃的でなく、とても肯定的に歌った人です。つくづく、若くしての死が惜しまれます。しかし、そのような話は、Otis Reddingやキング牧師が生きていたらなど無数にあるのでここではやめておきますが、彼のサウンドや精神的な影響は、娘のLalahはもちろん、その後現れた、80、90年代のいろいろなアーティストにしっかりと受け継がれています。

Donny Hathaway/Live
1. What's Goin' On
2. The Ghetto
3. Hey Girl
4. You've Got A Friend
5. Little Ghetto Boy
6. We're Still Friends
7. Jealous Guy
8. Voices Inside(Everything Is Everything)