| たけのこいいとこいちどはおいで
俺様は『釣道場の主』。今回俺様が狙う獲物は……、といきたいところだが俺様は実は寒いのは大嫌い。寒い冬は釣りなどやってられん!俺様はいい所があると門下生を引き連れ湯の郷碇ヶ関を目指し出発した。向かう所は知る人ぞ知る『久吉たけのこ温泉』。この温泉は休日ともなると三桁に手が届くほど人が来るくらい賑わう温泉らしい。
さて、中に入ってみると意外や意外。客は俺様たちだけの貸切状態である。「これはよい」と小奇麗な浴槽に一気に浸かる。
「むむっ!ちと熱いワイ!」
聞けば源泉は二九度でボイラーにより四三度に上げているという。しばらく入っていると肌はつやつや、体もほんのり温まってきた。門下生どもも気持ち良さそうに浸かっている。女子衆に壁越しに声を掛けると、
「いい湯加減だよ〜」
と声が返ってきた。これは連れて来た甲斐があったというもんだぜ!
ふと外に目をやると周囲は田畑と秋田県境の山々が間近に迫り、素朴な農村の風景が広がっていた。
湯舟から上がり満足した俺様たちは番台のおやっさんへ「なかなか良い湯であったぞ」と一言。更に尋ねる。
「番台やって何か良かったことはあるか?」
おやっさんは語る。
「村の人のほとんどが常連客で顔見知りです。八年やっているのですが、ここが始まったころ小さかった子供が今ではすっかり大きくなってここにやって来るんですよ。それを見ていると時の流れを感じるんですよね」
おやっさんの笑顔は満ち足りていた。
たけのこ温泉を後にし次に俺様たちが向かった先は、高名な黒石温湯(ぬるゆ)温泉郷。門下生の一人が今時130円で入れる所があると案内してくれた。そこは『温湯温泉大浴場』という何とも怪しげな温泉であったが、人がたくさんおり湯加減もなかなかのものであった。
温泉郷を後にし、帰りの道中でふと思った。「かかった予算は330円。これで十分過ぎるほどくつろげたワイ」これから活動が鈍る寒い冬がやって来る。そういう時こそ安上がりで身も心も温まる温泉巡りにお主らも行ってみたらどうじゃ?
|